Venus archtype

みなさんはアストロロジーの「金星」と聞いてどのような印象をお持ちでしょうか?


「愛と美の女神」「恋愛の神様」と捉えている方も多いかもしれません。
確かに、金星=アフロディーテは「愛と美の女神」であり、「恋愛の神様」かもしれませんが、
彼女のいう「愛と美」の愛とは、
分け隔てない無償の愛ではなく、極めてパーソナルなもの。
みんなにあったかいわけではなく、嫌いな人にはそっぽを向く。
でも、自分に利益があると思えば笑顔で近づくタイプ。
ボランティア? チッ、ダセェ、そんなことやる暇あったらエステ行くわ! というのが彼女の本音。



美とは、自分が一番に綺麗で愛されているんだから。というある意味エゴセントリックなもの。
他の誰かが「美」に悩んでいたとしても、
何それ知らん顔しちゃう神様でしょう。

「恋愛の神様」という肩書きの裏には、
彼女自身が「好き!」と思った男性すべてをだいたい射止めてきたから、という理由があります。
そう、彼女自身がいつも「恋愛している」というわけです。
ただ「彼のこと支えたいの」とか「尽くしたいの」なんて思ってきているわけではなく
「やだ! あの人かっこいい! 私のものよ!」
というエネルギーで突き進み、自分のものにした翌日にはポーイ! っと捨てちゃうことも。
こんなことで失明させられた人間の男性も神話には登場しています。



だから、物語「キューピッドとプシケー」のプシュケのように
「アフロディーテよりも美しい娘じゃ!」と言われて、
「そう? そう? あたしってアフロディーテよりもキレイ? えへ!」
と思っていると、アフロディーテはおかんむりに。
「お前があたしよりキレイなわけないだろ! この子娘が!」と
呪いをかけられること間違いなしです。
このイラストでは、いつものアフロディーテとはまったく違う顔を見せていますね。
この直後、きっとエステと美容院を予約したんだと思います。

アフロディーテの誕生の際には、
ウラノスの切り取られた性器から滴る血から
復讐の女神エリニーズ(ローマではフューリーズ。激怒を表す”fury”の語源ですね)が生まれ
これはアフロディーテの双子と見なされます。

占星学やシンボリズムの世界では、金星の隠れた一面を示すとされ、
「金星が怒ると出てくるもの」を彼女らは象徴しているのです。
つまり、金星のダークな面を示すのがエリニーズ。
女性性的なプライドを傷つけられたりすると、リベンジに走ります。
典型的な女の嫌な面は、金星の一面でもあるのです。



こうやって神話などを紐解いていくと
「万人に優しく、常に愛と調和を周囲にもたらす女神」なんてものとは
その元型はかけ離れたものと分かってくると思います。
ひどく人間的でもありますね。



以上をお読みになった方の中には、
「いいとこないじゃん!」と思う方もいるでしょうが
その人間的に「己の欲するものを求める」(これは火星と共通しています)姿は
これまでに感じたことのあるあなたの姿の一部と重なる部分があるかと思います。

個人的な「欲求」、彼女のいう「欲求」は「自分が満たされる」というものです。
満たされて、幸福を感じ、心のワクワク、ときめきの連鎖を産むようなものを彼女は常に追い求めています。

「彼にときめいちゃったから、お近づきになっちゃった」
「ヨガ始めてみたら、なんか調子いいー! 気分高まるー!」
「えーやだ、このバッグ可愛いーーー! 一目惚れー! 買う買うー!」
「絶対に着たいワンピに出会った! ダイエットがんばる!」
これもすべて、ときめきのなせる技ですね。
「ときめいちゃったから」がアフロディーテ、金星の原動力です。
自分がときめかなきゃ意味がない。

すなわち、それって「恋しちゃった」モーメント。
恋愛の女神と呼ばれる所以は、彼(彼女)との縁を繋ぐ、ではなく
あなたに「フォール・イン・ラブ」させて、ドキドキさせるから。
そう思うと、アフロディーテへの理解が一層深まります。



ときめいちゃって、お肌キレイになった。
髪もがんばってる。彼と今度デートすることになった。
みんなから「可愛くなったね」って言われるようになった。
などなどなど。。。
こんな副産物も金星の「ときめき」は運んでくれます。
「恋しちゃった」は極めて個人的な愛。
だから、金星が運んでくれる喜びも個人的なもの。
社会に還元しよう、なんてことにはまぁつながらないはず。
全体で何かを達成して、、、というのは、金星には無縁なお話です。
ボランティアに参加するアフロディーテがいるとすれば、
何か他の目的(好きな人や見返りなど)があるはずです。
割と彼女は打算的。

恋をするとときめく。それは、対人ではもちろん、対物でも恋は恋。
パリの雑貨が好き! ニューヨークの雰囲気が好き! 韓国のアイドルが好き! デスメタル大好き!
好き好きエネルギーは、「ときめき」の産物。
(かわいいものじゃなくても「好き!きゃあー!」と思えるものならデスメタルすら金星です)
金星のもたらす「人生においての永遠の青春時代」の瞬間。



アストロロジーにおいて、
太陽と火星は男性性、月と金星は女性性を示す、と言われます。
しかし、太陽のキーワードを見ていると「ヒーロー、若者、子供、父親」と出てきたり
月に至っては「少女、子供、母親」となったりで、
はてなはてな??? と疑問を持つ人も少なからずいることでしょう。
これは、太陽と月はあなた自身の中で「精神的に熟していく」からです。
スターウォーズのルーク・スカイウォーカーを思い出してみましょう。
彼の成長は映画を通して描かれていますが、これがまさに「太陽(ヒーロー)の成長」です。
太陽と月は人間としての成長に関わってきます。

反対に火星と金星ですが、「精神的に成長」はもちろんします。
けれど、彼らはいくら年月を重ねて、人生経験を積んだとしても
「おじいちゃん」「おばあちゃん」にはなりません。
彼らは常に「心臓が高鳴る瞬間」を求めているのであり、
「血湧き肉躍る」とき(アレス)と「キラキラ」するとき(アフロディーテ)が何よりの生きがい。
だから、火星と金星は「人生においての永遠の青春時代」なのです。



「あたしよりもあの娘の方が可愛いなんて、、、何よ何よー!」という嫉妬も、こういう産物だと理解できます。
嫉妬ももちろん金星の支配する領域です。
「もう年なんだし」
これは金星の最も嫌いとする言葉でしょうね。

自分に厳しくしない!も金星的。
一糸まとわない彼女の姿を見れば一目瞭然。きつくしないことは彼女にとってごく自然的なことなのです。
時々のご褒美スイーツだって、豪華なお食事だって金星的。
雰囲気を楽しみ、心も胃も満たされるような瞬間を運んでくれます。
ちょっとした失敗も、「やっちゃった!」と自分を責めない。
ただ、これは「甘え」「自己中心」にもつながるので要注意。

わたしたちは誰しも、ときめきを感じると胸は高鳴り、ワクワクと高揚感を感じます。
年齢を問わずにこういった出来事は、私たちの日常に散りばめられているのです。
これは金星の恩恵です。
「いつまでもときめきを忘れないで」
そう願うアフロディーテのメッセージを受け入れていくと、
人生のいろんなところでの「ときめき」ポイントもわかってきます。
「何にでも「ときめいて」いこうじゃない! だって「好き」ってすごく大切なの!」



この「ときめき」やときめきが運ぶキラキラした瞬間は、自尊心を高めます。
お化粧をしてきれいになったり、好きな洋服を着て満足することも、高揚感を高めてくれますよね。
すると、誰しもが「自分って結構いい感じ!」という思いを抱いて、
「自分をもっと好きになる」という好き好き連鎖が続きます。
それは外見以外でも、です。
内面的なものを言えば、
自分が満たされるとギスギスしなくなるので、外的要因に寛容になる。
すると人間関係で相手もギスギスしなくなったり、他人の荒々しさにも穏やかに対処できる。
「最近、自分ってなんかいいひとっぽい!」
と自分を肯定してちょっと嬉しくなる。

これらは自分を高めていくということ、自分の価値を認識するということ。
これも金星の恩恵です。
「どうせ、自分なんて、、、」といういう惨めな思いは金星は大の苦手。



あなたの中のアフロディーテを抑え込まないで、ワクワク・ドキドキ・キラキラさせてあげる。
人生に「ときめき」をたくさん見つける。
自分の価値を見出し、自分をもっと好きになってあげる。
自分を可愛がってあげる。
それがアフロディーテ・金星の願いであり、メッセージなのです。
つまるところ
「人生を楽しくエンジョイしようじゃない!」
なのかもしれません。
最後にボッティチェリの「ラ・プリマヴェーラ」を。
こういう「春」の姿こそ、アフロディーテの求めてやまないモーメントなのでしょう。
(右端の人怖い!と思う人へ、、こちら西風の神ゼピュロス。ヨーロッパでは西風は春の象徴なのです!)