心理占星学で使用される惑星は、11天体です。(太陽は恒星、月は衛星、カイロンは小惑星ですが、占星学ではこれらすべてを惑星と表現します。カイロンのことを小惑星と定義づけて使用する方もいます。)
各惑星の名前をクリックすると、惑星の説明にジャンプできます。


太陽(Sun)
太陽系の中心である太陽は、わたしたちのチャートの中でもやはり中心であり、コアとなるものです。
ギリシア神話においては、太陽の神であるアポロンが太陽を象徴しています。生まれてきたときから後光がさしていたというアポロンは、チャート上でも光を放つ存在です。他の惑星たちのリーダー、中心的な存在としてその役割を担います。
わたしたちは人生において、「こうしたい」「ああしたい」という太陽的なゴールを掲げて進んでいきますが、これはアポロンの予言の神としての側面であるとも考えられます。なお古代ギリシアでは、このアポロンの予言は巫女により地上へと届けられるため、アポロンが主宰するムーサたちの象徴するアートを通して自分の太陽は感じられるとも言われています。
内なる男性性(アニムス)の父親像を象徴します。パーソナルプラネット(個人的惑星)と呼ばれています。

太陽が象徴するもの:アイデンティティ、自我、ヒーロー、パーソナリティ、自己表現、創造力、リーダー、リーダーシップ、バイタリティ、自信、目的、ゴール、自己同一性、父性、男性など

月(Moon)
地球の衛星である月は、わたしたちの生活にとって最も身近な存在です。
感情を司りますが、優しさだけでなく、本能や反射的な反応、直情的な面といった一種の荒々しさも象徴するのは、月の女神であるアルテミスの狩猟の神としての一面、そして自分に追従する乙女たちには優しかったのに対し、アポロン以外の男性には手厳しかったという性格を反映しているものです。
アルテミスは母レトが、双子の弟であるアポロンを出生をするのを手伝ったとも言われているので(こちらも出生後ですが)、母親や女性も象徴します。
月は潮の満ち引きとも関係があるため、港や海の上の方の海水も月が支配する領域と考えられています。内なる女性性(アニマ)の母親を象徴しています。パーソナルプラネット(個人的惑星)と呼ばれ、個人としての感情を表現します。

月が象徴するもの:感情、安全欲求、保全性、無意識、ニーズ、本能、波、保護性、気分の変化、反射的な反応、母親、女性、食、家族、祖先、家族など

水星(Mercury)
アポロンの親友であるヘルメスにより象徴される水星は、わたしたちの思考やコミュニケーション、理性を司ります。
ヘルメスは生まれた瞬間から頭の良さを活かしてアポロンの牛を盗みますが、これにより二人は和解し親友になったという逸話も残されています。
ギリシア神話であの世、この世、神々の世界の三箇所を行ったり来たりできるのは、実はヘルメスだけです。そのフットワークの軽さからか、近場の交通手段なども水星により支配がされます。
いつまでたっても少年のような若々しさを保っているため、中性的な存在として描かれることもありますが、ときに老人の姿として描かれることもあるコロコロと変わりやすい神であったりもします。
パーソナルプラネット(個人的惑星)と呼ばれるように、水星の考えや言葉は極めて個人的なものなのです。

水星が象徴するもの:知覚、理性、意見、コミュニケーション、思考、興味、知識、知的活動、学び、気づき、会話、若者、トリックスター、皮肉、ウィット、器用さ、近場の交通、知性、学校、教師、兄弟など

金星(Venus)
ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」で有名な彼女は、愛と美の女神アフロディーテとしてもその名を世界に知らしめています。
トロイア戦争を引き起こした張本人でもありますが、「愛は何にも勝る」「愛により争いは生まれる」という言葉を象徴してか、戦いの神であるアレスを愛人としています。
古代ギリシアでは「抵抗できない(irresistible)」神であるとされ、誰も逆らえないほどの魅力を備えていた女神です。よって、わたしたちの「好きなもの」に対する態度、美的センス、価値観などを象徴しますが、「与えられたい」という欲望も金星により象徴されます。
月とともに内なる女性性(アニマ)を象徴しますが、金星は恋人を象徴すると言われます。パーソナルプラネット(個人的惑星)と呼ばれて、個人としての愛の形を表します。

金星が象徴するもの:愛、魅力、人間関係、欲望、平和、ハーモニー、怠惰、アート、価値、お金、協力関係、好きなものの傾向、自惚れ、外交性、妥協、女性など

火星(Mars)
戦いの神アレスは血を好んだ、というくだりがギリシア神話にあったと思うのですが、その通りに彼は勝ち負けではなく「戦い」そのものを愛した神です。
チャートの中でも、前進するための勇気や意志を象徴しますが、戦いの最中に生み出される怒りや攻撃性なども火星により示されるものです。
人妻であったアフロディーテを自分のものとしたため、「欲しい」という欲求も火星に結びつけられます。その衝動によりつき動かされるものは火星たるものなのです。
アレスは神々の神であるゼウスとその正妻のヘラとの子と言われているので(一説にはヘラが単体で産んだともされています)、実は神々の世界の王子様でもある彼は、内なる男性性(アニムス)の恋人たる姿を表すともされています。
パーソナルプラネット(個人的惑星)と呼ばれ、ひとりひとりのファイティングスタイルを彼は象徴しています。

火星が象徴するもの:意志、勇気、攻撃性、怒り、スピード、衝動性、メタル、鋭利なもの、武装、集中、エネルギー、欲望、熱狂、戦士、格闘、闘争本能、男性など

木星(Jupiter)
神々の中の神であるゼウスが支配する木星は、ゼウスのごとく将来を見据える感覚をわたしたちの中に宿します。
父であるクロノスを討ったゼウスのように、そこにあるのは自由を求めての大きな世界への出発と開拓です。木星は外へ向かっていくゼウスように、わたしたちに様々な世界を教え人間として成長させ、個人的な信条や社会的な知識を授けてくれる惑星です。
ただし、ヘラとの結婚後も、数多くの浮名を流したという性格から、木星は「もっともっと」とあらゆるものを大きくたくさんにしていく性質を持っており、ヘラに怒られてもラブロマンスを懲りずに繰り返すゼウスのような慢心さを生み出すこともあります。
外国や異文化も象徴する惑星であり、より大きな世界へ出ていくその性質からも、ソーシャルプラネット(社会的惑星)と位置付けられています。

木星が象徴するもの:前向きさ、期待、楽観性、展望、機会、チャンス、哲学、思想、拡大、信条、自由、信頼、大学、外国、神、精神性、熱狂、冒険、自信、怠惰、拡張、成長など

土星(Saturn)
父であるウラノスを天界から追放したときに、ウラノスに「お前にも同じことが起こる」と言われたことがトラウマとなってしまったクロノスは、生まれてくる子供を食べ続けますが、末っ子のゼウスによりウラノスと同じ目に遭うこととなりました。
しかし、そこでクロノスはゼウスに恨み辛みを言わなかった、そんな責任感と強い父親的な性格を持つのが土星です。
土星がわたしたちに教えてくれるのは、チャレンジすることとマスターすること。これを達成するまでには、恐れや恐怖、疑心暗鬼や自己否定などの数々のハードルが立ちはだかりますが、土星はそういった経験を乗り越えて頂上に達することを要求する惑星なのです。
惑星の性質を見れば、土星だけが「構築する」ことができる惑星なので、彼なしでは何も成し遂げることはできないのでしょう。
木星と同じく、社会経験を通して成長をもたらす惑星なので、ソーシャルプラネット(社会的惑星)と位置付けられています。

土星が象徴するもの:障害、壁、成長、挑戦、マスター、厳格さ、権威、試験、努力、決意、熟慮、他者との比較、限界、野心、恐怖、現実、建設、真面目、責任感、義務、尊敬、しつけ、コントロール、否定、ネガティブさ、防御、まなび、伝統、父性など

天王星(Uranus)
クロノスの父であるウラノスの名前が与えられていますが、この世代の神は自然的な力を象徴することが多く、あまり擬人化がされていません。そのため、天王星の性質はプロメテウスに似ていると読む占星家も多くいます。
常に人間の側に寄り添ったプロメテウスの性格は、神々から見れば反逆的でありますが、人間から見れば人道主義的です。
このような相反する印象を持つ天王星は、革命の惑星と謳われることがよくあります。最終的に文明をもらたすツールである火を、ゼウスに禁じられていたにもかかわらず渡してしまうのですから、その行為は個人主義的で予想もできず、ショッキングなものです。
しかし、これは神と人間どちらかに偏ることのないプロメテウスの現状への挑戦でもあったのでしょう。ゼウスのいう自由とは違う自由を彼は求めています。その性質はまさしく天王星そのもの。ありとあらゆる社会的なしがらみや因習を壊し、新しい世界への扉を強行突破する惑星なのです。
トランスサタニアンプラネット、またはコレクティブプラネット(集合体無意識惑星)と呼ばれています。

天王星が象徴するもの:衝撃、突発性、変化、急進性、現状打破、自由、奇抜さ、独創性、個人主義、革命、平等性、孤独、技術、ショック、客観的、人道主義、アウトサイダー、閃き、ユニーク、独立、天才/奇才/変人など

海王星(Neptune)
名前の通り、海の神であるポセイドンからこの名がつけられましたが、その性質はお酒の神デュオニュソスの性格も含みます。
ポセイドンはアテナの領土が欲しいと何度もアテナと交戦していますが、いつも「隣の芝生は青い」で終わってしまっていたようです。
彼の妻であるアムピトリーテーは大変美しかったそうですが、深海の奇妙な生物を愛玩していたとか。美しいと思うものが一般的な範囲を超えていくのも、海王星の特徴でしょう。
デュオニュソスの世界を旅して自身の信者を獲得し、神として認められるようになる(その間にワイン造りも習得する)という宗教性も、海王星の性質です。
月とは違い、海王星は深海の部分を支配しています。そこに沈むのは宝石か、故人の思い出か、屍か。そのような現世離れした混沌とした幻想こそが、海王星の象徴するものです。
トランスサタニアンプラネット、またはコレクティブプラネット(集合体無意識惑星)と呼ばれています。

海王星が象徴するもの:ロマン、想像力、夢、妄想、幻滅、荘厳、幻影、精神性、非現実的、完璧性、理想、恐れ、不安定、インスピレーション、混沌、霧、嘘、虚栄、共感、無自己、チャリティ、犠牲、被害者、救済者、ファンタジー、逃走、毒性、中毒、アート、喪失など

冥王星(Pluto)
冥府の神であるハデス自身は穏やかな性格をしていますが、亡者の世界の神ですから、そこで見る世界には人間の様々な感情が交錯していたことでしょう。
冥王星の象徴は「終焉と再生」です。ものが死に絶え、土に還り、また花を咲かす、といった生命のサイクルがそこにはあります。
でも終わったものに未練がましく、どうにかして取り戻そうとする亡者のごとく、諦めきれない気持ちや執着心もハデスは知っています。そこでいかに「終わり」を受け入れ、次のステージに進むのか。ハデスはそれをわたしたちに問いただす神です。
ハデスの話で有名な神話といえば、妻であるペルセポネーを誘拐した話。誘拐した女性を妻にするなんて、なかなか強引でタブーな感じも冥王星らしいです。
ペルセポネーの母親であるデーメーテルと彼女を奪い合いしますが、どっちも譲らなかったという逸話は冥王星の強情さや死守したい気持ちを表現しているのでしょう。
トランスサタニアンプラネット、またはコレクティブプラネット(集合体無意識惑星)と呼ばれています。

冥王星が象徴するもの:変化、世代交代、危機、深さ、力、サバイバル能力、あの世、意志、感情的な結びつき、偏執、執着、生と死のサイクル、コントロール、支配、カリスマ、激しさ、浄化、知識、自然、渇望、破壊的、否定、タブー、無意識または心理的な衝動、秘密、激動、腐敗など

カイロン(Chiron)
カイロンは小惑星(アステロイド)ですが、心理占星学をやっているとチャートで使うことが多いのでこのカテゴリーに入れておきます。
カイロンは傷ついた癒し手。半人半馬の姿で生まれてきたため、醜いと両親に捨てられ、他のケンタウロス族とも気が合わず、ひとりで洞窟で暮らしていましたが、アポロンとアルテミスに才能を見出されて狩猟や医学の知識を身につけます。
遅いデビューの後はヘラクレスやアキレウスなどのギリシア神話のヒーローたちの教師として献身的に支えていきます。
カイロンの性質もまさにこれそのもので、シャイさや自信のなさ、心に追った傷(でも実は他人から見たら「気にすることないよ!」と言われそうなもの)を象徴する一方、誰にも真似できない才能やメンター(師)としての姿を表します。
自分が不得意だと思ってきたものに懸命に励み、いつの間にか長所となっていた、というのもカイロンのような経験でしょう。

カイロンが象徴するもの:孤立、恐れ、アウトサイダー、架け橋、弱さ、心の傷、繊細さ、癒し、普通ではないもの、ユニーク、自己の気づき、内なるまとめ、成長するプロセス、共感性、知識、客観性、知覚、痛み、不安、被害者、教師、自信喪失、スケープゴート、シャーマン、心のアキレス腱、受容、独立など